2012年5月1日火曜日

小児の発熱のケアと解熱剤について


 

ぐったりしているけど? → 受診して下さい。でもその前に・・・

 熱が高く上がるときにぐったりするのは大変心配なものですが、決してめずらしいことではありません。小児の40度前後の発熱は、普通の夏かぜでもみられますから、これだけで必ずしも救急ということはありません。こういう時は解熱剤などで熱が一時的にでも下がった時の状態を見てみることも大事です。このときに機嫌も悪くなくそれなりに元気があるようなら心配ないことが多いのです。しかしインフルエンザなどのような体力の消耗が目立つ病気では、もともとそういう症状の疾患ですから、熱が下がりにくく元気にならないことも多いのは仕方のないことでしょう。しかしほとんどの人は3〜4日ほどで自然に熱が下がる病気です。(新� �は別です)インフルエンザの特効薬タミフルは多くの方に処方することになりますが、この薬も必ず投与しなければいけない薬ではありません。インフルエンザでは、高い熱にばかり気を取られず、意識がはっきりしているか、水分は足りているかなどに注意を払うことが大事です。

高い熱で脳がダメになる?

 かぜなどの高熱で40度を超えることがあっても、これが原因で脳が後遺症を残すことはありません。発熱とともに脳に後遺症を残す疾患とは、脳炎、脳症や化膿性髄膜炎のような脳の病気で、やはり熱が高いことから今でもよく混同されています。初期は普通の風邪でも、次第に意識がおかしくなったり、痙攣が止まらなくなったりして、亡くなられることもある重い病気で、かぜの症状とは次第にかけ離れてきます。発病頻度はきわめて稀です。熱がとても高くてもこのような症状が全く無い場合は脳がやられるなどの心配は無用です。インフルエンザ、重症肺炎、その他の重症な感染症でも人間の体温が41度を超えることはほとんどありませんが、脳細胞がやられてしまう温度とはこれよ りもう少し高い温度です。もし、解熱剤を使用してもなお体温が41度に近ければ冷やしたり涼しくしたりする必要があります。

補足:意識がおかしいって?

 視線が合わない、意味不明な言葉を発する、眠ってばかりで起こしてもまたすぐ眠ってしまったり、周りの状況が把握できていない、異常に興奮して暴れたり理解できない叫び声をあげたり、別人のような金切り声を出す、痛いほど刺激してもあまり反応がないなど。(いつもと違う時間に目が覚めたようなときに起こる異常行動は10分程度で普通に戻りますので脳炎や脳症とは区別しましょう)
タミフルとインフルエンザの異常行動に関してはこちら

冷やせばいい? 汗をかけばいい?


右耳の頭痛の痛み

 かぜで子供が熱を出したときは、[1] 熱が上がるとき、[2] 上がってしまったとき、[3] 下がるときの三つのステージで考えるとよく理解できます。体のなかにはファンヒーターやエアコンのようにサーモスタットと同じ体温維持機能があり36.5度前後に設定されているのですが、[1]ではこの設定が高く設定されるために体がその温度まで上がろうとします。熱が急に上がる途中が一番つらいもので、ぐったりしたり、ゾクゾクと寒気がして手足の先が冷たくなったり、不機嫌になったり、はいたり、おなかが痛くなったり、頭痛がしたり、手足を痛がったりします。これらの症状は熱が上がってしまうか、熱さましの薬を使うと軽減します。熱から起こるこれらの症状は初めのうちだけが多く、熱と関係なく続く場合は病気の本来の症状と考えることができます。熱があると冷やそうとしますが、必ずしなければいけないことで はありません。熱が上がろうとしている時、本人は寒気がしていることが少なくないので、このときに冷やすのは本人にはストレスになります。冷やすのは心地よい程度にしておきましょう。むしろ寒気がしている間に限って、暖かくしてあげるほうが良いでしょう。熱で寒気がしたときに毛布にくるまった経験ありませんか? そんなとき両脇に冷たいものを当てられたら・・・
 仮に平熱が36.5度とします。人間には36.5度に体温を維持しようとする機能が働いています。体温が寒冷などで33.5度まで下がっている場合、体温を3度上げようと悪寒(ゾクゾクと寒気がしてガタガタブルブルといった震え)が起こり、平熱に近づいてくると徐々に楽になります。こんなときに冷たいものを当てる人はいませんね。同じ人が風邪をひいて� �が出る場合、体温維持機能の設定が39.5度に変更されると、体温との差は同じく3度となり、これを一致させようとするために悪寒が起こります。これらの違いは温度がずれているというだけで、全く同じ体温調節機能が働いているのです。人間は急に体温を上げようとすると体温維持機能がフル回転となり体力を消耗します。したがって暖めてあげることが体温調節機能を助け、体力の消耗を少なくすることになるのです。39.5度の発熱を冷やすだけで下げようとするのは、36.5度の健康な人の体温を33.5度まで下げることとほぼ同じストレスを与えてしまうことが危惧されます。


にきびブルークリーム

冷却シートについて(その功罪)
 さて、よく見かけるのが冷却シートですが、最近は100円ショップにもあります。額など数カ所に貼る程度では、解熱はほとんど期待できないでしょう。体中に貼れば効果も出ると思いますが、これでは水風呂につけるのと変わりありません。患者さんのお母さんに「何度まで上がったら使ってもいいですか?」と聞かれ、一般の方が解熱剤と同じ様に考えていらっしゃるのに驚いたことがあります。良い所といえば、冷やしたぬれタオルの様に額からずれ落ちない、副作用がなく(医薬品としての効能がないので当然ですが)、お母さんに良い事をしてもらった(貼ってくれた)という満足感がおでこに感じ取れるといった所� �しょう。ヒット商品ですが頼れるものではありません。企業の宣伝で、病院でやっている効果的な使い方と称して脇の下に貼る方法を紹介しているのですが、使うタイミングによっては拷問のようなものです。さらに病院では冷却シートは使いません。氷嚢を使ったとしてもタオルにくるんで使い、直接当てる事はまずありません。冷たいことを嫌がっているにもかかわらず強引に両脇に貼っていたため、服をめくるだけでパニックを起こすというPTSDのお子様や、貼ったところが痛くなると言った神経痛の症状が出たお子様がいらっしゃいました。さらには熱性痙攣の体質を持つお子様の中には、坐薬の挿入刺激に反応して痙攣が起こるお子様もおられますので、冷やしたシートでも同じことが起こる可能性が否定できません。ここまで� �るとデメリットが大きいので、よく考えて使いましょう。(というか、使わなくても良いのです)


グルテン不耐症と手の痛み
人の発熱を自動車に例えてみましょう。車が一定の速度で走行する時はアクセルペダルは一定に踏んでいます。人の発熱は車では急に速度を上げることと同じで、アクセルペダルを一気に踏み込みます。ガソリンは多く消費され、エンジンには負荷がかかり、うなりを上げます。人ではこれが悪寒と同じで体力を消耗します。体温が上昇中に体を冷やすのは、速度を上げる途中でアクセルを踏み込んだまま同時にブレーキも踏むことと同じで、より負荷がかかる上に目的の速度に達するまでの時間も長くなります。車の後ろから追い風が吹いて後ろから押されると負担が減りますが、人では暖めることと同じです。速度が上がってしまえば、アクセルは最初� ��り少し踏み込んだ程度まで戻すことができます。このときに後ろから押され続けると速度が上がってしまいますが、人では暖め過ぎと同じで体温はもっと上昇することになります。ちなみに少し踏み込んでいるアクセルペダルを最初の状態まで戻すのは、人では解熱剤を使うのと同じことになります。

 熱が上がってしまったら[2]、手足が暖かくなって、寒気がとれ、顔がほてってきたり、不機嫌もやや落ち着いてきます。嫌がらなければここで冷やすのは悪くはないでしょう。なかには元気になってしまうこともあります。こういう時は解熱剤は使わずに様子を見てかまいません。定期的に水分を補給することも大事です。冷やす方法は冷却シートだけではありません。むしろかけているタオルケットや毛布または着ている服を一枚少なくしたりする方がより効果的で、夏はエアコンの温度を下げるのも良いでしょう。(喘息の方はエアコンの冷気で発作が出ることがありますので注意が必要です)
 解熱剤や回復期で熱が下がる時[3]は汗をかきます。これは運動後の汗と同じです。間違っているのは、布団蒸しのような状態で暖 めて汗をかかせて熱を下げるという考え方です。これでは熱はもっと上がり、不機嫌になり、熱中症や脱水症を引き起こして、ぐったりするようになります。こうなるといざ熱が下がっても元気になりません。間違った考え方ですので、絶対にやめましょう。

補足:熱中症こそ冷やすべき。

 体を物理的に冷やすのが最も適切な病態は熱中症で高体温になっている時です。これは体温維持機能が正常な体温を保とうとしているにもかかわらず、高い環境温(外気温・直射日光・衣服・輻射熱)、運動による発熱などの影響に体温調節がついてゆけない状態です。こういう時こそ、全身を濡らしてあおいだり、腋窩部(脇の下)や鼠径部(太ももの付け根)に冷たいものを当てます。
このやり方は一般的な風邪などの発熱に安易に行う適切な方法とは言えませんのでご注意ください。受診したときの腋窩体温測定も出来ません。

解熱剤(熱さまし)、使っていい?


 熱を下げる薬は坐薬(ざやく)のほかに粉やシロップ、錠剤などがありますが、いずれも解熱剤(熱さまし)と言い、小児に安全なものはアセトアミノフェンという成分のみでできています。「小児に解熱剤は使ってはダメ!」と言う見出しを見たことがありますが、これも誤解を生む表現で、アセトアミノフェン以外の解熱剤のことを説明しているものです。年齢にもよりますが、使うと良くない解熱剤というのは、小児科専門医ならまず処方しないはずです。解熱剤は病気を治して熱を下げてしまうのではなく一定時間だけ熱を下げてくれたり、苦痛を軽減し楽にするための薬です。ちなみにまたファンヒーターに例えるとこのスイッチを一時的に切るのが解熱剤というわけです。解熱� ��は熱があるときに必ず使う必要はありませんが、どんな時でも使わない方がいいというのも言い過ぎです。熱でやや元気がないという時に解熱剤を使って、元気になって走り回ってしまっては安静が保てませんが、お子様が熱のためにとてもつらそうにしていれば使ってかまいません。使う目安は38.5度というのがよく使われるのですが、使い過ぎないためのわかりやすい目安として定着してきたものなので、厳密に守る必要はありません。熱によって苦痛を感じているのかどうかということをまず重視し、合わせて判断した方が良いでしょう。「最近のインフルエンザ事情」の所の「解熱剤は使わない方がいいの?」の項にも関連する記述がありますのでお読み下さい。なお、熱さましは解熱鎮痛剤ともいいます。意外にご存じないこと� ��多いのですが、38.5度以上の熱が無くても、頭痛、耳痛、歯痛などの痛み止め(鎮痛剤)としても使うことができます。使用間隔などの使い方は同じです。もう一つ、よく「お兄ちゃんの座薬なら持っているんですけど〜」という質問があります。アンヒバ、カロナール、アルピニという座薬なら、1回分が体重×10mgとなるように切って使えます。例えば、体重が15kgなら、150mgとなりますので、1個200mgの座薬なら3/4(4分の3)個を使用すればいいのです。でもよくわからないという方、自信の無い方はやめましょう。また解熱剤が効きすぎる体質の方は当てはまりませんのでやめましょう。切って使う方法は小児科医ならよく指示しますが、正確に切れているかわかりにくい形をしています。当クリニックの処方量なら指示した量の+/� ��20%程度の誤差は大丈夫です。なお、病気の種類や体質も考慮した上で夜間の発熱や鎮痛目的の場合はやや多めで使用するといったさじ加減があります。ここはその時の医師の説明に従って下さい。

2007年厚労省の小児薬物療法検討会議(主軸は日本外来小児科学会)の結果、アセトアミノフェン製剤の小児科領域での効能・効果は「小児科領域における解熱および鎮痛」となり、用法・用量は「通常、乳児、幼児および小児にアセトアミノフェンとして、体重1kg当たり1回10〜15mgを使用する。使用間隔は4〜6時間以上とし、1日総量として60mg/kgを限度とする。ただし、成人の用量を超えない」と統一されることになりました。今までの日本のスタンダードは投与量/投与間隔ともに非実用的で、効果がなくなっても何時間も待たなければ� ��けなかったのですが、これでやっと適正な使用量になりました。(2007.4.21 追加)

解熱剤で熱が下がらない!/効きすぎた!


 病気にはそれぞれ様々な熱の勢い(いきおい)があります。熱が高いと重症と思われがちですが、病気の重症度と必ず一致するものではありません。たとえば、突発性発疹症や、ヘルパンギーナのような病気では高熱が出ても通常は心配ありません。一般に解熱剤は体重を基準にして一定の投与量が決まりますので、熱の勢いが強いと解熱剤が負けてしまい、あまり効かないこともあります。これは必ずしも異常なことではなく、解熱剤の量が少なめだった場合も同じことが起こるため、直ちに救急/重症というわけではありません。逆にすぐに下がったので怖いという方もおられますが、顔色が良くそこそこ元気なら心配ありません。でも下がり過ぎてぐったりしていれば要注意、診察を� ��けるようにしましょう。

夜になると熱が高くなる!悪くなっているの?

 夜に熱が高くなると病状が悪化したと感じて不安になった経験があると思います。その上、病院が閉まっていることも不安を助長する要因の一つでしょう。人の体温は睡眠のリズムやホルモンの昼夜の変動などに影響を受けるために、朝のうちは熱が下がりやすく、夕方から夜間にかけて熱が出やすく、高く上がりやすい傾向があります。このため夜にお風呂に入った後で熱が上ったりするので、お風呂に入ったことが原因のように思われがちですが、じつはこういう理由が大きく係わっているのです。したがって熱が数日続くような場合で病状の経過を考えるときに、昼と夜を比べるよりも同じ時間帯の熱を比較するほうがわかりやすく、時にはある程度熱を予測でき� ��場合もあります。

お風呂は?

 日本では、鼻水や咳が出ているだけで、熱がなくても何日もこどもをお風呂に入れていないという方ををまだまだ見かけます。熱があまり高くなくそこそこ元気があり笑顔も出るようなら、シャワーや入浴も良いでしょう。あせもやおむつかぶれができやすいなら、そこだけでもシャワーで流してあげるのも良いでしょう。お風呂が悪いという考えはお風呂が原因で熱が上がるという誤解や、寒い冬の夜でもお風呂屋さんまで出かけていって入浴し、湯冷めで冷えきって帰ってくるという昔の日本特有の習慣からきたものと考えられ、時代遅れで日本特有の考え方です。これも熱の高さよりもどれくらい元気があるかに注目して判断して下さい。でも入浴中はお子様から目を離さないようにしましょう。お� ��さんが洗髪中に、もし湯船のなかで熱性痙攣が起きたら・・・ということも頭の隅に入れておきましょう。

脱水になるかも!

 水分補給は大事だとはわかっていても、飲んでくれなかったり吐いてしまったりするのはしばしばあることです。熱が上がる最中に悪寒や不機嫌が強く嘔吐しやすい場合は、少し待ったり熱を下げたりしてからあげましょう。水分は処方でもらうソリタT顆粒(乳児も可)、アクアライト(乳児も可)、スポーツドリンク、スープ(濃くないもの)などでも結構です。水分が不足していれば水分を欲しがり、糖分が不足していれば甘いものを欲しがり、塩分が不足していればスープなどを欲しがる傾向がありますので、欲しがるものを与えることは意味があります。乳児で水様下痢がない場合は、ミルクが普段の半分程度でも飲めていれば数日程度は大丈夫でしょう。泣いてもあまり涙が出てこなかっ たら脱水の始まり、口の中が乾燥気味ならかなり脱水が進んでいます。点滴が必要です。

まとめ



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